アウト オブ ザ ブルー

その後彼は残りの仕事を終えるとまた私のカーテンの中に戻って来て、


別の清掃員が呼びに来るまで彼なりのホール・アンド・オーツ論を延々と語ってくれた。



私は彼らの歌に興味があったが洋楽にはそれほど詳しくなかったので、彼の話はかなり興味深かった。




彼が胸に着けていた名札を見ると、クリーニング会社の社名の下に『佐藤』という名字が記されていた。



それで別れ際、「佐藤さん、またいろいろ聞かせてくださいね」と言ったら、


彼はなぜか表情を曇らせ、「ごめん、名字で呼ばれんのあんまり好きじゃないんだよね…。下の名前で呼んでくれる?『コージ』って」


と言って、カーテンの向こうへ去って行った。
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