アウト オブ ザ ブルー

彼は少しはにかむと、右手の人差し指で宙に大きく文字を書きながら言った。




「言ったっけ?俺の名前は漢字でこう『幸せが二つ』って書くんだよ」






そう言われてみれば、コージさんの名前は漢字でどう書くのかまだ聞いたことがなかった。


私はすぐにその字を頭に浮かべてみた。


「このふたつの幸せはさ…、ひとつはもう他の子にあげちゃったんだけど、まだひとつ残ってたから、それをみちるにあげるよ」




「え…?」




「これでみちるも幸せになれるはず…。だからもう必要以上に悩みすぎんなよ?」






意外とロマンチストなんだなあと思ったが、それが彼なりのやさしさだとわかると、


私の涙腺はまた緩んでしまった。
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