アウト オブ ザ ブルー
§10 別れの足音
洗面所へ向かう途中、向こうからゆっくり歩いてくる白いコート姿の女性の顔に、なんとなく見覚えがあるなと思った。
彼女とすれ違った瞬間、私はそれが深雪ちゃんだと確信した。
彼女は駅裏の産婦人科病院に通っていると聞いていたので、どうしてこの病院にいるのかわからなかったが、
絶対深雪ちゃんに間違いないと思った。
立ち止まり後ろから彼女の名前を呼ぶと、女はこちらを振り向き、私の顔をじっと見た。
「ミッチ先輩…?」
私がうなずくと、彼女は「うわあ、お久しぶりです」とこちらへ戻ってきた。
以前に比べるとかなりふっくらし、長かった髪もいくらか短くしていたが、そのかわいらしさは変わっていなかった。
「元気だった?妊娠して急に大学やめたって聞いてたから心配してたよ」
「すみません…。先輩こそお元気でしたか?」