アウト オブ ザ ブルー
「私も今日やっと退院できたんで、今赤ちゃんに会って来たんですけど…、特に私がしてやれることは何もなくて、保育器の外から声をかけてくるだけで終わりました…」
深雪ちゃんはため息をついた。
そしてこう付け足した。
「子どもの退院の目処がつかないので、とりあえず毎日冷凍させた母乳を届けに来なきゃいけないんです…。だから先輩、また話し相手になってくださいね」
彼女は笑顔を見せてくれたが、私はどんな言葉をかけてあげればいいかわからず、
「とりあえず早く赤ちゃんが元気になるといいね」とだけ言った。
キーチは子どもが生まれたら入籍すると言っていたので、ホントはその話がどうなったのか気になっていたけれど、
事実を聞くのがなんだか怖くて、
聞いたら世界が終わってしまいそうで、
それ以上は何も言えなかった。
「ありがとうございます」と言った彼女の左手薬指を盗み見ると、
まだそこに光るものはなかった。
けれどもう時間の問題なのは明らかだった。