アウト オブ ザ ブルー
「それが…、なんか私らしくないんですけど、いざ子どもが生まれたら、占いの吉凶より自分のつけたい字を優先したいなあって思えてきたんですよ…」
そう言って軽く息を吐いた深雪ちゃんは、母親の顔をしていた。
「へー。それで結局、なんて名前にしたの?」
彼女は恥ずかしそうに笑った。
「あの…、単純なんですけど、周りを幸せにできる人になってほしくて、『幸せ』って漢字一文字で『サチ』って名づけようと思ってるんです…」
「へー、さっちゃんかー」
「はい…。占い的にはそんなに良くないみたいなんですけど、女の子は嫁に行けば名前が変わっちゃうし、やっぱり親がつけたい名前をつけるのが1番かなと思って…」
深雪ちゃんは大きな目を輝かせた。
前回会ったときに深雪ちゃんは全然変わってないなと思ったけれど、今日は少し別人のように見えた。
母親になったせいだろうか。
「それで、明日婚姻届と出生届をまとめて出してくる予定なんです」