アウト オブ ザ ブルー

深雪ちゃんが帰って行った後、


私はなんとも言えない虚しさに襲われた。




聞くのが怖かったふたりの入籍話は、いつまでも私の心の中に黒い渦を描いていた。




また誰かにこの苦しみを聞いてほしかったけれど、


その日はコージさんが来る日ではなかったので、私はこのつらさにひとりで耐えるしかなかった。



まおちゃんは仕事が忙しそうだし、


友実も今頃実家に帰って、親の会社に入るための研修でバタバタしてるだろうから、連絡して愚痴を聞いてもらうのも悪い気がした。






悶々とベッドに横たわっていると、看護師に呼ばれ、私は先生の内診を受けることになった。




下着だけ取って病衣のまま古い内診台に上がると、


すぐに医師がやって来て、色あせたカーテンの向こうから事務的に聞いてきた。


「調子はどうです?」


「あ…、最近はそんなに悪くないです」


そう答えると、診察後彼は、


「頸管長も伸びてきているから、しばらく大丈夫でしょう…。でも切迫早産が完治したわけではないんで、自宅に帰ってからも安静にしてくださいよ」


と退院の許可を出してくれた。
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