アウト オブ ザ ブルー
私はマサに何も言わなかったが、
父は「なんだ、そんなことで結婚をやめたいだなんて言ったのか」と言った。
「そんなことって…」と横から母が父を肘でつつく。
「正式に採用されなければ、臨時の話がくるのを待てばいいだけのことじゃないか」
「でも、もしその話がこなければ、僕は無職ってことになるんですよ…?」
「そしたらアルバイトでもなんでもすればいい」
「それはそうなんですけど、そんなんで稼ぐ金なんてたかが知れてます…。保険にだって入れるかわからないし…」
マサは肩を落とし、ため息をついた。
「仕事が…、お金が全てとは言いませんが、生まれてくる子どもにはできるだけ不自由のない生活をさせてあげたいんです…。でもそれが難しいかもと思ったとたん、自分が情けないわ、みちるさんには会わせる顔がないわで、やっぱり結婚はできないなと思ったんです…」
マサは再度「申し訳ありません」と謝ったが、父はどうも納得できないようだった。