アウト オブ ザ ブルー
カーステレオからは相変わらずホール・アンド・オーツのナンバーが流れてくる。
「キーチこの曲ホント好きだねー。私もキーチの影響で好きになっちゃったよ」
私がそう言うと、彼は前を向いたまま言った。
「じゃあ、そのCDあげるよ。どうせあっちに行けば、こっちより安く買えるし」
「えっ…、いいの…?」
「うん。ほら…、ミッチ先月誕生日だっただろ…?遅くなったけど、バースデー・プレゼントってことで」
「覚えててくれたんだ、私の誕生日…」
「7月18日だろ?」
胸がきゅんとした。
「すごい、ホントに覚えてたんだ…」
誕生日も2ケタ日だと覚えづらいものなのに、キーチはそれを間違えずに言った。
「だってさ、ゴロがイイじゃん?誕生日が『有る』のに『無いや』なんて」
彼は目を細めて笑った。
「ありがと…」
誰かに誕生日を覚えていてもらえるのは嬉しいが、それが好きな人なら感激もひとしおだ。
彼の横顔を見ながら、やっぱりこの人のことが好きだなと思った。