アウト オブ ザ ブルー

出産してから最近までオロが少し続いていたものの、まだ生理は再開していなかった。


最後に生理がきたのは妊娠する前だったから、去年の8月の初め頃だったと思う。



それを看護師に正直に伝えると、「それじゃ、妊娠の心当たりはありますか?」とやたら強い口調で聞かれた。


「ありません」


私は即答した。



マサとは以前より心の距離が近づいていたが、まだそういう関係にはなっていなかった。






私はその場でまた少し待たされ、数分後、やっと診察室に呼ばれた。



白髪の医師が私の話を聞きながらカルテにペンを走らせ、喉と胸とを軽く診察した。


私が「しんどいので、何かいい薬を出してもらえますか?」と言うと、


医師は「薬は出してもいいんですが、妊娠の心配はありませんか?」と言った。


「時々いるんですよ、妊娠したのを風邪をひいたと勘違いして内科を受診する人が」




驚いた。


看護師に続き、先生にまでそんなことを言われるとは…。




そう言われると、自分の答えにも自信がなくなってしまう…。


キーチと過ごした最後の夜が脳裏をよぎった。




けれど私は「ありません」と言い切り、薬局で薬をもらって来た。
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