アウト オブ ザ ブルー
「それで私、ふたりはとっくに別れたよって言ったのね。そしたらキーチ、なんか声を弾ませてたから、てっきりミッチにプロポーズするのかなって思ってたんだけど…、なんだ、しなかったのか」
そのセリフに、私の胸はチクリと痛んだ。
「う…ん…」
「そっか…。まあ、あいつもミッチもいろいろあったから仕方ないかもしんないけど…、独身に戻ったミッチにキーチが何も言ってくれなかったんなら、ミッチもあいつのこと、今度こそ本当に忘れた方がいいかもね」
その言葉は、更に私の胸を突き刺した。
私は目の奥がにじんでくるのを感じながら、なんとか笑ってみた。
「もう、友実ってば…。私、キーチのことなんてもうとっくの昔に忘れてるよ…」
そう笑ってみた。
笑ってみたが、グラスを握る手が震えているのが自分でもわかった。
「そう…?」
友実が疑わしそうな目を見せた。
「そうだよ…」
私は口元を精一杯上げ、どうにか微笑み続けた。
「それならいいけど…、じゃあ今日はいい出会いでも見つけて帰ってってよ」