アウト オブ ザ ブルー
1人暮らしの狭いアパートに帰った後も、何もする気が起きなかった。
すぐ横になったが、ベッドに入ってからもいろんなことが頭をよぎって、なかなか寝つけなかった。
まず親になんて言おうか考えた。
父の怒る顔が目に浮かぶようだった。
大学はちょうど後期授業が始まったところで、4年生となった今、あとは卒業論文さえ書けば一応全部終了というところだった。
卒業までなんとかごまかせるかなと思った。
ごまかせなくても仕方ないだろうなと思った。
まだ就職先が決まってないのは不幸中の幸いだった。
それから、
キーチのことを考えた。
キーチというのは、私の大学で英語を教えている和泉喜一先生のことだ。
まだ30代前半の講師で、
「むこうでは生徒も教師をファーストネームで呼ぶんだ」と言って学生に自分のことを呼び捨てにさせている、なんとも気の若い先生だ。
彼自身、生徒をファーストネームやニックネームで呼んでいて、他の教授先生のようにお高くとまっていないので、学生からのウケもいい。