アウト オブ ザ ブルー

「なあみちる、ちょっと順序が違うよな…？結婚もしてないのに、嫁入り前の娘がはしたないと思わないか…？」




父は大柄で無愛想なせいか、娘の私でもなんとなく近寄り難い雰囲気を持っていた。


頭が固く気が短い上、怒るとすぐに手が出るので、私は昔から父に睨まれると何も言えなかった。



「子どもの父親ってのは、どこのどいつなんだ…？」




「それは…」




もしここで本当のことを言わなければ、後々面倒なことになるのは明らかだ。



私は思い切って、正直にキーチの話をしようと思った。


「お父さん、実はね…」




しかし父は私の話など聞いてくれる様子がなかった。


「大事な娘を傷物にしやがって…、その男、会ったらただじゃすまないぞ…」


父はそう言うと、ポケットからタバコとライターを取り出した。


そして壁際に椅子を見つけると、そこに腰掛け、貧乏揺すりをしながら1本ふかし始めた。


母が「お父さん、ここは禁煙ですよ」と注意したが、全く聞く耳を持たない。