アウト オブ ザ ブルー
時が経つのは早く、季節はいつしか冬に移り、その年のカレンダーも残り少なくなっていた。
切迫流産の兆候は少しずつおさまっているような気がしたが、
妊婦検診と学校に行く以外、私が外出することはほとんどなくなっていた。
家で卒論を書いているだけではどうしても飽きがくるので、
体調がいいときにはマサに変わって夕食を作ってみたりした。
しかし何をどう作っても義母と忍ちゃんには「味が薄い」とか「まずい」とか言われてあまり食べてもらえず、
結果自分に自信を失くすはめになった。
料理が認めてもらえないなら、掃除や洗濯を頑張ろうと思うこともあった。
けれど自分ではどんなに掃除したつもりでも、義母は鋭い目を光らせ「髪の毛が落ちてる」と舌打ちしたり、
洗濯機にかけただけでは落ちない汚れ物を見つけては、「こういうのは普通洗濯機に入れる前に手洗いするわよねえ?」と忍ちゃんに同意を求めたりしていた。
そういうとき忍ちゃんはきまって私を鼻で笑い、「家事もろくにできないくせに、そんなんで母親になれると思ってんの?」とでも言いたそうな顔をした。
居候の身で何も恩返しができないというのは、かなり肩身が狭かった。