アウト オブ ザ ブルー

義母が調理場で料理を作る間、私が店に出てお客さんの注文を取ったり、レジを打ったりすることもあった。


けれど私がちょっと目を離した隙に、ある中年カップルに食い逃げされてしまったことがあり、


それ以来私は店に立つことを許してもらえなくなった。



マサや卓くんには「運が悪かったんだよ」とか「気にしなくていいよ」などと励まされたが、このときほど落ち込んだことはない。


マサの家族とはもう2ヶ月近くも一緒にいるのに、


いつまでたっても自分はこの家のお荷物なんだという感じが否めなかった。




親には心配をかけたくなかったので何も相談できなかったし、


マサに言っても「考えすぎだよ」と言われるだけで、何の解決にもならなかった。


それで友実やまおちゃんにメールで愚痴ったり、


みんなが寝てからこっそり卓くんに聞いてもらったりする日々が続いたのだが、


卓くんにはいつも「母と妹がすまないね」と謝られ、逆に申し訳ないくらいだった。
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