始まりの予感


授業が始まっている事に気付いたのも、ずいぶん後になってからで。


教科書とノートを出す事すら忘れていた私は、どれだけラブレターに気を取られていたんだと少し恥ずかしくなった。


クスクス


隣から視線を感じ、ゆっくりそっちの方を見た。


エイジは頬杖を付きながら私の目を見てヘラヘラ笑っている。


古典の先生の授業は、生徒を楽しませようとユニークなギャグやオリジナル劇を用いた内容を取り入れていて少々騒がしいのがいつもの光景。


「なによ?」


だから、小声でなら少しくらい話しても問題はない。


そのヘラヘラ顔はなに?


「シオがいつもよりニヤニヤしてるから気持ちわりーって思っただけ。良かったな、ラブレターなんて人生初だろ?」


エイジめ、決め付けるような言い方しやがって。

どうしてこう嫌味しか言えないかな。


「そうだけど、悪い?少なくとも、エイジよりは優しい人だと思うよ」


エイジが私をバカにするから、私もそれに合わせて返事をする。


プイとそっぽを向き、エイジを見ないようにするのが唯一私に出来る抵抗。


「あ?俺だって十分優しいだろうが。シオは俺の愛をわかってねぇ」


「わかりたくもないわ」


あんたの愛なんて。

っていうか、愛がある方がおかしいわ!


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