始まりの予感


「ちょっと待って、今開けるから」


ガタガタいう古くさい扉を無理やり力でこじ開けようとする私の目に、うっすら人影のようなものが見えた。


声がすぐ側で聞こえ、扉に掛けていた手をそっと離す。


「よっと」


あれだけ苦戦したにも関わらず、中の人は慣れたように扉を開けて、更には笑顔を浮かべて出迎えてくれた。


「どうぞ」


そう言ったてくれたのは、爽やかスマイルがよく似合う同じクラスで学年モテ男ナンバー1の有明(ありあけ)君。


「ありがとう。有明君って図書委員だったの?知らなかった」


「まぁね」


色気たっぷり、フェロモン全開の有明君は、お得意の必殺王子様スマイルで笑って見せた。


優しくふんわり笑うその顔に、簡単に私の女心は掻き乱される。

この笑顔に何回やられそうになった事か。


し、心臓が持たない。

やばい、鼻血までっ。

その眩しさにめまいまでして来る。


色素が薄いフワフワの猫毛。

その甘い雰囲気からは、バラの香りが漂って来そうなほど。


「佐竹(さたけ)さん?」


スポーツも出来て勉強も出来る。

まさに非の打ち所がない完璧な人。

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