始まりの予感


「え……あ、なに?」


やばいやばい、思わず見惚れてしまった。


学校のアイドルで人気者だし、同じクラスだけどほとんど話した事がない。


免疫がないのよ、免疫が。

だから目が離せない。


「いや、なんかボーッとしてたから。大丈夫……?誰もいないし、自由に使っていいよ」


「あ、ありがとう」


そう言った後、有明君はカウンターに座り直し読みかけの本を手に取って読み始めた。

長いまつ毛に綺麗な鼻筋。


イケメンに図書室ってのも案外悪くないな。


ま、エイジには不向きだけどさ。


本に視線を落とす有明君の横顔は生唾ものだけど、私は今それどころじゃない。


奥まで進むと、すうっと大きく息を吸い込み、静かに息を吐いた後ポケットからラブレターを取り出した。


人生初のラブレター。

嬉しくないわけがない。


「ふふっ」


いけない、嬉しすぎて思わず怪しい笑いが。

聞こえてないよね?


読むのがもったいないけれど、読まない事には始まらない。


思い切って封を切った。


ドックンドックンする胸を押さえ付けながら、達筆なその字と綺麗な文章に目を走らせた。

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