始まりの予感
は、鼻がひん曲がりそう。
「こんなとこまで付いて来るなよ」
マリアちゃんがエイジの腕に自分の腕を絡めた。
エイジは面倒くさそうな表情を見せるけど、結局はそれを受け入れてる。
嫌がったり、突き放したり、邪険にしたりしない。
それはマリアちゃんがエイジの幼なじみだからで、特別な存在だからだろう。
私にも幼なじみがいるし、エイジがマリアちゃんを大事に思う気持ちはすごく良くわかる。
「いいでしょ!ねー、今日エイジの家行ってもいい?」
上目遣いで瞳を潤ませるマリアちゃんの姿は、女の私から見ても十分に可愛らしい。
これを断れる男がいるのなら見てみたい。
「んー、無理」
って、また断るんかい。
眉根を寄せながら返事をするエイジ。
面倒くさいからなのか、マリアちゃんを大切にする気持ちからなのか。
わからないけど、胸が痛いのはなんでだろう。
エイジがマリアちゃんを大切に思えば思うほど、私の中の気持ちがざわざわモヤモヤする。
「シオリ先輩もエイジに言って下さいよー!マリアにもっと優しくしろって!」
リスみたいに頬を膨らませたマリアちゃんもすごく可愛い。そんな顔で言われたら、胸が疼いて仕方ないのに味方したくなっちゃう。
「そ、そうだよ、エイジ!マリアちゃんに放課後来てもらったら?」
言った後、ものすごく胸が痛くなった。
なぜなのかはわからない。
ただ、キリキリ痛くて仕方なかった。
「は?本気で言ってんのかよ?」
さっきまでのヘラヘラした顔ではなく、明らかに不機嫌な顔をエイジは私に向ける。