始まりの予感


は、鼻がひん曲がりそう。



「こんなとこまで付いて来るなよ」



マリアちゃんがエイジの腕に自分の腕を絡めた。


エイジは面倒くさそうな表情を見せるけど、結局はそれを受け入れてる。



嫌がったり、突き放したり、邪険にしたりしない。



それはマリアちゃんがエイジの幼なじみだからで、特別な存在だからだろう。



私にも幼なじみがいるし、エイジがマリアちゃんを大事に思う気持ちはすごく良くわかる。



「いいでしょ!ねー、今日エイジの家行ってもいい?」



上目遣いで瞳を潤ませるマリアちゃんの姿は、女の私から見ても十分に可愛らしい。


これを断れる男がいるのなら見てみたい。



「んー、無理」



って、また断るんかい。



眉根を寄せながら返事をするエイジ。

面倒くさいからなのか、マリアちゃんを大切にする気持ちからなのか。



わからないけど、胸が痛いのはなんでだろう。



エイジがマリアちゃんを大切に思えば思うほど、私の中の気持ちがざわざわモヤモヤする。



「シオリ先輩もエイジに言って下さいよー!マリアにもっと優しくしろって!」



リスみたいに頬を膨らませたマリアちゃんもすごく可愛い。そんな顔で言われたら、胸が疼いて仕方ないのに味方したくなっちゃう。



「そ、そうだよ、エイジ!マリアちゃんに放課後来てもらったら?」



言った後、ものすごく胸が痛くなった。
なぜなのかはわからない。
ただ、キリキリ痛くて仕方なかった。



「は?本気で言ってんのかよ?」


さっきまでのヘラヘラした顔ではなく、明らかに不機嫌な顔をエイジは私に向ける。


< 39 / 88 >

この作品をシェア

pagetop