始まりの予感
そうだよね。
大切な大切なマリアちゃんには、下心満開の姿なんて見せられないもんね。
だから、私を誘ったんだよね。
大切なお姫様は、エイジの特別な存在。
だからこそ家に来る事を拒む。
大事にしたいから。
だから、エイジにとってどうでもいい私が呼ばれた。
ただそれだけの事なのに、なんでショックなんか受けてんのよ、私。
「本気だけど?デートとかして来たらー?」
チクチク痛む胸を無視し、からかうように笑顔を浮かべてエイジとマリアちゃんの顔を見た。
気を良くしたマリアちゃんがエイジの腕をブンブン揺らしながら、駄々をこねるようにエイジにデートをおねだりする。
「マリア、観たい映画があるの。今日の帰り一緒に行こ?」
首を斜めに傾けてエイジの顔を下から覗き込むマリアちゃんを尻目に、私もこんな風に可愛くなれたらなんて思った。
「わかったよ、そこまで言うんなら付き合ってやる」
「やったぁ!」
マリアちゃんが、嬉しそうにエイジの腕に飛び付く。
それを見て、デートを後押しした事を少しだけ後悔した。