始まりの予感
は、般若って。
私の怒った顔は他人からそんな風に見えるのか。
ふとマリアちゃんの怒った顔が頭に浮かんだ。
頬を膨らませながら怒る顔はとても可愛くて。
少し…いや、かなり劣等感を感じてる自分がいた。
差し出されたポッキーを指でつまみ、勢い良く口の中へ放り込む。
そこへエマの綺麗な顔がグイっと寄せられた。
「で、誰からだったの?」
大きな瞳を細く曲げ、艶やかな唇の口角をにっと上げながらエマが私に迫る。
危機迫るその迫力に、ラブレターの事を言っているのだろうとすぐに予想がついた。
「そういえば、名前書いてなかった」
端から端まで読んだけど、名前はどこにも書いてなかった。
ただ、話があるから体育倉庫に来てほしいとだけ書かれていた。
エマだけしかいないし、どうせ根掘り葉掘り訊かれるんだから言ってもいいよね。
「うわぁ、それちょっと怪しくない?体育倉庫なんて密室じゃん!いきなり襲いかかって来られたらどうすんの?」
「もー、誰かさんと同じ事言わないでよ。大丈夫だって、いざとなったら逃げるから」
それにそんな事する人じゃないよ、きっと。
ラブレターに名前を書けないくらいシャイな人なんだよ。