始まりの予感
どうしよう、授業始まっちゃう。
クラスメイトは私達を見てクスクス笑っている。
これも、いつもの日常。
「ちょっと!早く手離してよね!写す時間なくなるー!」
そう言いながら、ぐぐぐっとノブのノートをエイジの手から奪還するべく引っ張る。
ゴツゴツしたエイジの手がやけに憎らしく見えた。
「そういえば、俺数学の宿題やって来てたわ」
エイジは八重歯を見せてイタズラに笑うと、ノートを掴んでいた手をパッと離した。
急に手を離された事により、反動で思いっきり身体が後ろに仰け反る。
ノートは宙を舞い、スローモーションでも見ているかのように床に転げ落ちた。
「うわぁ」
とっさにイスにしがみついた事で、なんとか落ちるのを免れた。
あ、危なかった……
もう少し反応するのが遅かったら、後ろに倒れ込んでいたかもしれない。
「ぶは、やべえ、シオマジウケる」
エイジはものすごい形相でイスにしがみつく私を見て、お腹を抱えて大笑いし始めた。