始まりの予感
こ、こいつ。
マジ性格悪い。
少しでもドキドキしたあの時の私の時間を返せ。
あの時の私は頭がおかしかったんだ。
うん、きっとそう。
エイジに、こんな奴にドキドキしてた自分が情けない。
「最っっっ低!」
渾身の力を込めてそう言い、エイジの顔に背を向ける。
ノブにちらりと目を向けると、声を押し殺すようにして密かに笑っている姿が映った。
「ひどい、ノブまで笑うなんて!」
ムキになる私を見て、ノブはバツが悪そうに顔をしかめた。
悪いのはどう考えてもエイジじゃん。
それを面白がって。
終いにはエマまで笑っている。
「ほら早く写しなよ、先生来ちゃうよ」
ジトっとエマを見つめる私に対し、エマが優しく声をかけて来る。
「わかってる、どうせ皆エイジの味方なんだ」
イジメられてる私は、どうせ笑われて終わりなんだ。
そう思いながらノートにシャーペンを走らせた。
数学の先生は古典の先生とは違って、かなり頭が堅く授業も教科書に沿っていてかなりつまらない。
黒板に向かう先生の背中を見て、チョークが擦れる音をぼんやり聞いていた。
そういえば。
ラブレターの事を思い出しポケットに手を伸ばす。