始まりの予感
かっこ良いと思ったり、ドキッとする事はあるけどそこまでなんだよね。
そこから先に進まない。
ただその時の感情だけで終わってしまう。
誰かに恋い焦がれる気持ちはまだわからないけど、ラブレターの相手の事を考える気持ちに少し似ているのかもしれないと思った。
ドキドキして、ワクワクして。
相手の事が頭から離れなくて。
恋をするとこんな気持ちになるのかな。
掃除が終わって教室へ戻って来ると、カバンに荷物を詰め込んでいる有明君の後ろ姿が目に入った。
様子を伺いながらそっと近付き、声をかけるタイミングを見計らう。
「あ、有明君」
「どうしたの?」
きょとんととした不思議そうな顔で、有明君は少しだけ首を傾げて見せた。