始まりの予感


いや、あの…どうしたのって。

さっき、怒ってましたよね?



そんな顔をされたら拍子抜けしてしまう。



「え、あの、さっきの事だけど…ごめんね?」



「ああ、それね」



有明君は今の今まで忘れていたのか、私の言葉でさっきの事を思い出したようだった。



くしゃりと髪を掻き上げて爽やかに私を見下ろす有明君。



「俺もちょっとやり過ぎたかなって反省したんだ」



少し申し訳なさそうに有明君は言った。こういうところがエイジとは違ってていいなと思う。


まずエイジの中に反省という文字はない。



「いやいや、悪いのは完全にこっちだし」



「うん、でも……佐竹さんが図書室来てくれなくなったら寂しがるだろうし」



寂しがる……?


「……誰が?」



目をパチクリさせながら、食い入るように有明君を見つめる。



そんな私に苦笑いを浮かべて、恥ずかしそうに頬を掻いた有明君はサラッと次の言葉を言った。


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