始まりの予感
「図書委員担当の水無月先生が」
少し恥ずかしそうに視線を横にそらした有明君は、頬をぽりぽり掻いてなにやら照れ笑いまで浮かべている。
ほんのり色付く頬。
いやいや、わかりやすすぎだから!
え、なに。
有明君と水無月先生ってそういう関係?
ありえない。
でもどう見たって、この顔は恋する乙女の顔だ。
「え、あ、そっ、そっかぁ。うん、また行くね。返さなきゃいけない本もあったし」
顔が引きつる。うまく笑えているかどうかは微妙だった。
「うん、でも水沢には近付くなって言っといてね」
「え、エイジに?」
そう訊き返すと有明君は険しい表情でコクリと頷いた。
エイジには縁がない場所だから、言わなくても行かないと思うけど。
もしかして、有明君ってエイジの事が嫌いなのかな。
「あのっ、エイジの事嫌い?」
私の質問に有明君の眉がピクッと動いた。