始まりの予感
肩に掛けていたカバンが床にドサッと落ちたのと、エイジの腕に包まれたのはほぼ同時。
「な、なにすんのよっ」
ますますわけがわからない。
次第に速く脈打つ鼓動。
図書室での事が頭の中にフラッシュバックする。
エイジから離れようと抵抗したけど、きつく抱き締められているせいでビクともしない。
「なに考えてるかって……?俺の頭の中はいつもシオのことでいっぱい」
耳元に響くエイジの弱々しい声に、さっきまでの怒りがスーッと消えていく。
エイジが言った言葉を理解する事が出来ない。
意味が、わからない。
頭の中に私しかない?
あ、いつもいつも私をどうイジメるか考えてるって事?
そうだよね、だってそれ以外にありえない。
そう思っても、異様な雰囲気のエイジに問いただす事は出来なかった。