始まりの予感
それ以上、なにも言わないエイジ。



一つだけ言えるのは、今のエイジはいつものエイジとはかけ離れているって事。



いつものようにからかって笑ってよ。

冗談だって、私の事バカにしてもいいから。



そう思っても口になんて出せなくて、後頭部に回されたエイジの優しく髪を撫でる仕草に戸惑いを隠せなかった。



優しいその手つきに悪い気はしなくて、されるがまま固まって動けない。



「エ、エイジ?」



やっとの思いで絞り出した声はものすごく小さなものだったけど、すぐ側にいるエイジの耳には届いたみたい。



「ん?」



「離して」



優しいトーンで返事をしたエイジに、同じくそのトーンで言う。



とりあえず、皆が見てるから。



ね?


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