始まりの予感


ラブレターの人、早く来てー。



だけど、呼び出しておいて夕方になっても現れないっておかしくない?



跳び箱の上に座りながら、ぼんやりと目の前の真っ白な壁を見つめる。



もしかして、騙された?



一向に現れないラブレターの相手に、私の頭の中はそんな考えに支配されていった。



だって、おかしいよね。


差し出し人不明のラブレターが靴箱に入ってて、体育倉庫に来て下さいって。



来ても誰もいないし、いきなり後ろから現れた女子に背中を押されて体育倉庫に閉じ込められるなんて。



どう考えても話が出来すぎている。



誰かが私に恨みを持っていて、ラブレターを装う振りをしてここへ呼び出したと考える方がしっくり来る。



エイジファンには前々から目を付けられていたし、廊下ですれ違う度に睨まれたり舌打ちをされたり。



心当たりがありすぎて、逆に誰の仕業なのか見当がつかない。


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