始まりの予感
いや、やっぱり違うよねっ。
だけど、それじゃこの状況をどう説明するの?
「シオ」
「へっ⁉う、うわっ‼」
顔を上げると、吐息がかかりそうなほどの近い場所にエイジの顔があって思わずビクッとした。
そして腕から逃れようと身をよじらせる。
「逃げんなって、シオ」
ジタバタする私に、エイジはクスッと笑いながら腕の力を強めて来る。
「は、離してっ」
ドキドキしすぎて、おかしくなりそう。
胸の鼓動がエイジに届いてしまう気がして、必死にそこから逃れようとした。
「シオ」
ドキドキ
ドキドキ
「お願いだから、離してよ」
必死の抵抗も虚しく、私は未だにエイジの腕の中。
「聞けって」