§スウィート・ルージュ§~甘い秘密を召し上がれ~(完)
その日の午後
渡部さんが、泊まるホテルに着いたと連絡があり、
ホテルまでの道がわからない私を心配し
ジュリアさんと一緒に私は出かけた
ロビーのソファーで待っていると
「咲和ちゃーん」
私を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと
渡部さんが、近づいてきた
「あら、ジュリアも来てくれたのぅ?
嬉しいわぁ、久しぶりねぇ」
「えぇ、私も久しぶりにアンタの顔見たかったから
咲和ちゃんに付いてきたわぁ」
渡部さんとジュリアさんは、もう長年の付き合いらしい
2人、ハグをしながら嬉しそう
「ね、早速だけど、打ち合わせしましょ、
あっちのカフェに取材の子たち待たせてるの、いきましょー」
キャリーケースをガラガラと引きながら
渡部さんが颯爽と歩いていく後ろをついていった
ホテルを出てすぐのカフェに
いかにも業界の人とすぐわかるような日本人が3人
席に座り、談笑していた
席に近づき、自己紹介をし合う
テレビの情報番組のディレクターさん、
女性雑誌のライターさん
新聞記者さん
どの人も、渡部さんと古くから交流がある人たちだそう
取材の内容を打ち合わせしていると
私たちの席に近づいてくる人がいた
「遅くなって申し訳ない」
いつものパティシエ姿ではなく
スーツで川端さんが現れた
「川端さん、お待ちしてました」
川端さんも呼ばれてたんだ…
どうやら、テレビの取材が
川端さんのお店のオープンと私の取材を兼ねてるそうだ
打ち合わせが終わり、
カフェを皆で出たところで
カメラのフラッシュがあちこちで光った
「な、なにっ?!」
「川端さん! 今度のお相手は、後ろの彼女ですかっ?!」
「彼女のケーキに惚れ込んで、彼女もゲットしたワケですかっ?!」
川端さんとその後ろにいた私は、
いきなり、どこかの雑誌記者から質問を浴びせられた
「ちょっとー! アンタたち! どこのモンよっ!
アタシの許可なく、撮るんじゃないわよっ!」
渡部さんが、私たちを庇って
記者たちを蹴散らしてくれた
「び、ビックリしたーっ」
「失礼しちゃうわよね、まったくっ! 大方、芸能ネタならなんでもやるヤツらに決まってるわ 心配だから、調べて止めさせるわね」
私は何もできないから、渡部さんに任せるしかなかった