§スウィート・ルージュ§~甘い秘密を召し上がれ~(完)

桜井くんが私の左手を持ち
流れる水道水に私の手をあててる

それはいいんですが…

いくら給湯室が狭いからって、
私のうしろ…うしろから包むようにしてるのは
ちょっと…


なんだか…そっちばかりに気がいってしまうのょ…


「さ、桜井く…ん、も、もう大丈夫だと…」


「ゴメン、せんせ、火傷、痕が残るとダメだから
もうちょっと!」


「あ、う、うん…はい…」


真剣に私の左手を見つめてる桜井くんに従うしかなかった




「せんせ、病院、行こう!

ちょっと、これはきちんと手当してもらった方がいい

オレも一緒に行くから」


水道水から私の手を離し
傍にあったタオルで私の手を拭ってくれる桜井くんが言った


「えー、いいわよ、ただの火傷なんだし、すぐ治るってー
私の皮膚、結構頑丈なのよ、心配ないってー」


「だーめっ! 後々、傷痕で残っちゃったらどうするのっ?!

手は商売道具でしょっ?!生徒さんも心配するから!」


いえいえ、病院行って包帯なんて巻いちゃったら
よけいに心配すると思うケド…


「とにかく、行こう! まだ午前中の診察間に合うから!」


有無を言わさず、私の右手を引き、いったん事務所に戻り
私のカバンを桜井くんが持ち


「ちょっと待って! かつ乃せんせーにメモ残すから」


サラサラサラと付箋に文字を書き、かつ乃先生の机に貼った


なんだか…


桜井くんの行動の一部始終がとっても頼もしく感じて
わたしの口元が緩んでいた


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