§スウィート・ルージュ§~甘い秘密を召し上がれ~(完)
「火傷、ひどくなくて良かったー」
診察と処置を終えて
エスカレーターに乗って
前に立つ私の両肩に
私の後ろにいる桜井くんの手がのった
「え?! あ、うん
だから、たいしたことない、って
言ってたのに大袈裟なんだからー」
エスカレーターが1階に着くまで
肩に乗った手がとっても
気になってしまう
1階に着くと私の横をすり抜け
「せんせ、ココで待ってて!
オレ清算してくるよ!」
私の返事も聞かずに
清算カウンターに行ってしまう
あーもー
なんか、桜井くんペース全開だわ…
でもね、『慣れ』というのだろうか…
桜井くんの行動には
前ほど驚いたり、気が立ったりは
しなくなった…かな…
私の心が広くなったせいもあるかもね…
それにしても
どこにいても、桜井くんは目立つわねー
院内を歩く女性患者さんやナースが、桜井くんに目を向けるもの
たとえ、お年を召した女性でさえもね…
「あの…」
そんなことを思いながら
いつのまにか、桜井くんを目で追ってた自分を
女性の声が我に返らせてくれた