§スウィート・ルージュ§~甘い秘密を召し上がれ~(完)

私たちは今

マリンホテルの衣装室の傍の休憩スペースのソファーに
座っている


直と二人で相談し
衣装室へ入る前の悟さんと話そうということになった


悟さんは
時間より早めに行動する人だから
約束の時間の1時間前に来て
悟さんを待っていた


明け方に眠ったから
まだ、寝不足で
欠伸が出そうなその瞬間


「あの…」


後ろから声をかけられた

欠伸を噛みしめ
振り向くと、


見るからに仕立てのよさそうな黒のスーツを着た
スレンダー美人の女性がいた
漆黒の髪がハーフアップにされて
女の私が見ても上品さの中に色っぽさを醸し出してる


「…?」


ただいくら記憶を手繰り寄せても
こんな美人の知り合い
私にはいない


直の方を向いてみると
誰?といった顔を私に向けていた


「失礼ですが、小嶺咲和さん…ですよね?」


「は、はい そうですが…

えっと…」


どう、切り替えしていいのか迷った


「ごめんなさい、突然お声をかけて…

私、こうゆう者です」


白魚のような手とはこの人の手だろう

透き通って細くて…

名刺に添えられた手に目が奪われた


「咲和?」


私を呼ぶ直の声で我に返った


名刺を受け取り

直と一緒に見る


そこには、悟さんの会社名と

“室長秘書 倉田よう子”

と書いてあった


ぶっちゃけ、悟さんの秘書さんなんだ


「あ、はじめまして 小嶺咲和です」


あ、名前は知ってるか…

名乗って、少し恥ずかしかった


とりあえず、深々とお辞儀をしてみる



「あ、どうぞ頭をお上げになってください

咲和さん

折り入ってお話があるのですが、よろしいですか?」


美人の彼女の瞳が少し潤んでいたのを
直も私も見逃さなかった








< 97 / 138 >

この作品をシェア

pagetop