秘密の2人
遠い存在
一紗と約束した通り、蒼空は午後の生徒集会に参加した。
今日は体調が悪くなることはなく、午前の授業も全部受けた。
「おー、さすが今年初だけあって参加者が多いな。」
集会が行われる生徒講堂へ一緒に移動した一紗が言った。
「本当だね。」
蒼空と一紗は空いている席に座った。
生徒集会への参加は任意で、不参加の生徒も多い。
いつもは全生徒の半数ほどしか集まらないが、今日は欠席者以外のほとんどの生徒が参加しているようだ。
「まぁ、それだけじゃないか。今年の会長さんは注目度高いからなー。」
「…そうだね。」
「おっ、噂をすれば。」
騒がしかった講堂内が、やや女子寄りのざわめき声になった。
壇上に新生徒会長が現れたのだ。
〔あぁ…本当に遠くなっちゃった…〕
壇上には優羽の姿がった。
一年の時に生徒会役員に抜擢されていた優羽は、その後の役員会で会長に任命された。
三年を押しのけて二年が会長をするのは珍しく、さらに学園の最注目生徒でもある優羽が生徒会長をするという事で、今日の集会は参加率が高くなったようだ。
蒼空は壇上で生徒に向かって話をしている優羽を見つめた。
もう同じクラスでもないし、ライバルでもない。
何の繋がりもなく、ただこうして優羽が生徒代表として前に立ったときだけ見ることのできる存在になった。
時々資材室にお邪魔して休ませてもらっているが、会うことは無い。
その事で蒼空は、今まで知らなかった感情を知ることになった。
蒼空にとって優羽はただのクラスメートでは無かったのだど、二年になって改めて感じた。