秘密の2人
思い
数分後、二葉は少し落ち着き、一紗はなんとなくグッタリして見えた。
「そっかぁ…、2人で買ってきてくれたんだ…」
「そうだよ。私場所知らなかったし、荷物持ちがいるでしょ?」
「それがまたいいよねー!!」
「えっ?どれがいいの!?」
蒼空は今の会話で、二葉の興奮ポイントがどこなのかわからなかった。
「彼女の荷物を彼が持ってくれるってのがよくない!?」
「あー…そこね。」
確かに、それはうれしいことかもしれない。
けど、そこまで興奮する事でもない気が…。
「いいなー…私もいつか経験できるかなー」
二葉は今までの勢いが嘘かのように、急にシュンとした。
蒼空は二葉の変わりように驚いたが、
「できるよ。これからでしょ?っていうか、私達はデートしたわけじゃないけどね。」
と、二葉に声をかけた。
「でも、もしこの先も病気がひどくなったら?私、また入院してずっと病院の中かもしれない!」
蒼空はハッとした。
二葉は自分の病気について、一紗が蒼空に話したことを聞いていたのだ。
さっきまでキャーキャー言っていた子とは思えない、二葉は涙をボロボロ流して蒼空にしがみついたのだ。
「二葉!!」
一紗が慌てて二葉を止めようとした。
しかし、蒼空がそれを遮った。
蒼空はしがみついて全身に力が入った二葉を、両腕でぎゅっと包み込んだ。
「ごめん、軽々しく言って…。」
二葉はさらにグッと身体に力が入った。
「でも、嘘でも慰めでもないよ。私は本当に二葉ちゃんにいつか彼ができて、2人で仲良くデートすると思ってる。」
「…そんなのわかんないじゃん!!」
「わからないことない。絶対にできるよ。でも、そのためには今の二葉ちゃんではダメね。」
「…なんで~?」
二葉は涙も鼻水も垂れ流しているのか、鼻をすすった。
「気持ちが病気に負けてる。病は気からでしょ。気持ちが弱ると病気は勢い付くんだよ?いつか彼とデートするんだから、病気なんかに負けないぞーって気持ちで踏ん張るんだよ!」
蒼空は腕に力が入った。
「二葉ちゃんは今でも踏ん張ってると思う。でも、私にはその辛さがわからない。口でしか言うことができないもどかしさがあるし、代わってあげることも出来ない。周りも二葉ちゃんと違う形で辛い想いをしているんだよ…」
蒼空は続けた。
「なんで私が…って思うよね?神様は不公平だって思うよね?でも、病気で苦しい思いをするのが運命だって神様が決めたとしても、全力で反抗して、運命なんて変えてやったらいいんだよ!!」
二葉は顔を上げて蒼空を見つめている。
「運命を変える…できるのかな?」
二葉は蒼空に問いかけた。
「できるよ。っていうか、人の運命勝手に決めつけるなって感じだしね。自分の人生は自分でつくらないと。」
「うん。そっか…そうだよね!」
二葉は涙を拭いて、ニコッと笑った。
「…お前…鼻水出てるぞ…」
一紗が箱ティッシュを持ってきた。
「!!?うそっ!?」
二葉は慌ててティッシュで鼻を隠した。
それを見て蒼空はほっとしてプッと吹き出した。