秘密の2人
「はじめまして…かな。F組の真田です。」
一紗が優羽にあいさつをした。
「はじめまして、駒居です。」
優羽も返した。
だが、実は優羽は一紗の存在は認識していた。
校内で蒼空を見かけた時に、一紗と一緒にいる姿をよく見ていたのだ。
正直、気になっていた。
「あのさ、スカイのことなんだけど」
「スカイ?」
「あ、蒼空のことなんだけど」
一紗は言いなおした。
優羽の表情が一瞬曇った。
一紗はそれに気が付いたが、今度はあえて訂正はせず話を続けた。
「最近学校にきてないだろ?」
「……そうだな」
「なんでか知ってるか?」
欠席の理由は聞かなくてもわかっていた。
ただ、それを一紗に話していいのかわからないし、話すのが嫌だった。
「さぁ、知らない。」
優羽は知らないふりをした。
一紗は優羽の返事を聞いてため息をついた。
そしてポケットから封筒を取り出し、優羽に差し出した。
「これ、担任から預かった。」
「え?」
優羽は封筒を受け取った。
「スカイ宛の書類。渡してきてくれ。」
「えっ⁉︎」
優羽は封筒の宛名を確認した。
確かに蒼空宛だ。
「じゃあよろしく。」
「あっ…おいっ‼︎」
一紗が帰ろうとしたので、優羽は呼びとめた。
一紗が振り返った。
「会ってスカイに元気を与えてきてくれ。」
そう言うと扉を開けて階段を下りて行った。
優羽は呆然と立ち尽くした。