秘密の2人
扉の向こうの優羽は、少し戸惑いながらノブを回した。
数分前、一紗に渡された封筒を持って佐渡邸を訪問した。
出迎えてくれた蒼空の母親は、以前と同じように明るくテンションが高かった。
それを見た優羽は内心ホッとした。
蒼空の状態は、最悪の状態を想像していた優羽の考えよりはマシのようだ。
玄関で預かった封筒を渡し、蒼空の事を聞こうか迷っていると、それを察したのか母親は2階を指差した。
「あの子上の部屋で休んでるの。少しだけでもいいから、顔を見て帰ってあげてくれないかな?」
優羽は母親の計らいに言葉が出なかったが、精一杯の気持ちで頷いた。
母親はニコッと笑い家の中に案内してくれた。
「前と同じ部屋にいるわよ。」
「すみません、お邪魔します。」
今度はきちんと言葉が出た。
靴を脱いで階段を登り始めた時、
「声をかけて返事がなくても、中に入ってあげてね。」
母親が優羽に声をかけた。
それを意味することがなんなのか、優羽にはわからなかったがとにかく頷いた。
返事を見て母親は優しく微笑んだ。