秘密の2人

「やぁ、初めまして。君が優羽君か。」


「初めまして。駒居優羽です。」


蒼空の父親と、優羽は初めての顔合わせだ。


2人とも長身なので、なんとなく威圧感がある。


「いつも娘が世話になってるね。」

「いえそんな…。今日はお誘いいただきありがとうございます。」


優羽は父親に向かって頭を下げた。


すると、父親の後ろから…。


「ほーらね!優羽ちゃんは完璧男子でしょー?つい数日まで高校生だったとは思えないでしょ?」


母親が父親に向かって話しかけた。


「もー!お母さんうるさい!」


蒼空は頬をプクッと膨らませた。


「そーだそーだー、うるさいぞー。」


蒼空に便乗して、父親もブーイングした。


その姿をみて、優羽はなんとなく想像していた父親より、柔らかい感じがしてホッとした。


その時、搭乗アナウンスが流れた。

「あっ!ほら、行かないと!」

母親はパッと切り替えて、スーツケースをコロコロ引いて歩き出した。

「待ってよー!」

蒼空は慌てて母親の後を追いかけた。


「俺たちも行けるところまで行こうか。」

「はい。」


優羽と父親も2人の後について歩き、ゲート前で止まった。


蒼空と母親もゲート内に入って立ち止り、2人を見た。


「…じゃあ、行ってきます!」


蒼空は元気な声と、満面の笑みで手を振った。


「おう、頑張るんだぞ!」


父親も笑顔で手を挙げた。


「…気を付けて。」


優羽もなんとか声を出し、小さく手を振った。


「うん。じゃあね…。」


蒼空は一生懸命の笑顔で答えた。


「着いたら連絡するからね。さぁ行くわよ!」

「はーい。」

母親はいつも通りの態度で、蒼空を連れて先に進んだ。

2人の姿が見えなくなるまで見送った。


残された男2人はしばらく立っていたが、


「…上で離陸するのを見て帰ろうか。」

「…はい。」


優羽は父親の言葉に、一言返事をするだけで精一杯だった。


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