秘密の2人
「あれかな?2人が乗っているのは。」
観覧デッキにやって来た父親は、離陸準備中の飛行機を指差した。
「…どうでしょうか…。」
優羽は飛行機をぼーっと見ながら答えた。
初対面の父親と2人きりになった緊張よりも、蒼空が旅立つ現実をここに来て初めて実感し、心に余裕がなくなっていた。
その姿を父親は横から見て、カバンから可愛くラッピングされた袋を取り出した。
「はい、優羽君。」
「え?」
優羽は差し出された袋を見た。
「蒼空からだよ。預かってたんだ。自分が飛行機に乗ったら君に渡してくれってね。」
「えっ⁉︎」
優羽は困惑しながら袋を受け取った。
受け取った袋をそっと開け、中を確認した優羽は、自分の目頭が熱くなるのがわかった。
慌てて横を向き、目を閉じて熱くなった目頭を落ち着かせようとした。
その姿を見てか、父親は飛行機をもう一度見て、
「お、もう離陸するよ。」
と、飛行機を指差した。
優羽は離陸という言葉に焦燥感のような想いに駆られるのがわかった。
目を開け、異国の地へ飛び出す飛行機を見つめたその目からは、堪えきれずに涙が流れた。
走り出した飛行機はあっと言う間に大空に飛び立ち、遠く、小さく、見えなくなった。
横を向いて涙を拭う優羽の背中を、父親がポンポンと叩いた。
「ありがとう。蒼空を見つけてくれて。」
父親の言葉に、落ち着き出していた涙がまた流れた。
それを見た父親はははっと笑いながら、
「さぁ、蒼空が頑張るんだ。優羽君も頑張って、蒼空が帰って来た時には胸を張って迎えてくれよ?」
と、もう一度背中を叩いた。
「っ…はいっ。」
涙を拭い、優羽は蒼空からもらったシャボン玉セットが入った袋を握りしめた。