秘密の2人
蒼空は掲示板を見つめ、しばらくするとどこかへ去っていった。
その姿を生徒会室に移動しようとしていた優羽が見ていた…が、声はかけずにそのまま見送った。
優羽は他の生徒の目に付くところで、万年追試組の蒼空と話する事を避けていた。
理由は、
《特進組と元特進組〔現万年追試〕の会話は格好の的になるため》
である。
優羽は自分が注目されることは気にならない。
だが、蒼空と注目されるのは嫌なのだ。
優羽は元特進組の蒼空と話すと、蒼空が落ちこぼれである事を周りに思い出させ、無駄に視線を浴びるのではないかと懸念している。
周りが『近寄り難いが、本当は優しい』と騒ぐのはまんざら間違いではない。
優羽は自覚のない気遣い屋なのだ。
しかし蒼空に対する行動に関しては、本当の思いは別のところにある。
それは優羽自身もまだ気付いていない。
〔今日は来ないな…〕
蒼空の後ろ姿を見てそう感じながら、優羽は生徒会室に向かうことにした。
この日も2人は『体調不良』『生徒会の仕事』を理由に授業を欠席した。