秘密の2人
「ここだよ~。どうぞ~。」
優羽は蒼空の部屋に案内された。
蒼空の部屋はパステル調で、温かみのある感じになっている。
「………。」
女の人の部屋に入ったことのない〔正確には、男女両方だが〕優羽は、部屋の前で躊躇った。
それに蒼空が気付いた。
「どうしたの?」
「あ…いや…」
「もー!!さっ!早く!」
「ぅわっ……!」
蒼空は優羽の腕をつかんで部屋に引っ張り込んだ。
そして、部屋の扉を閉めた。
「……乱暴者め」
腕を引っ張られた優羽は、部屋に入ったところで転んで片膝をついた。
「ごめんごめん。優羽ちゃんが動かなかったからついね~。」
蒼空はケラケラ笑いながら謝った。
「椅子にどうぞ~。」
優羽は学習机の椅子に座り、蒼空はすぐ横にあるベッドに腰掛けた。
「…なんか新鮮…」
蒼空が呟いた。
「…何が?」
「ふふ…。この部屋に男の子がいることが。というか、家族以外の人が入ったことはないのよね~。」
「…へぇ…」
優羽は素っ気ない返事をしたが、心はドキドキしていた。
優羽だけでなく、蒼空も人生初体験中だったのだ。
「お前、友達少ねーのな。」
「うん。優羽ちゃんには言われたくないけどね~。」
「俺はそんなもの必要ない。」
「だよね~。」
優羽と蒼空は、まるで生徒会室にいるかのように話をした。
会話が途切れて2人は沈黙した。
少しして蒼空が口を開いた。
「……お母さんに何か聞いた…?」
「……何かって?」
優羽は突然の振りに、心臓の音が蒼空に聞こえたんじゃないかと心配になった。
「……読めないなぁ~。」
蒼空は優羽の顔をジッと見て、
「……よし。」
と何かを決めた。
蒼空は改まって姿勢を正し、優羽の目を見た。
「今から話すことは私の独り言だから、優羽ちゃんはいつもみたいに聞いててね?」
「独り言…。」
親子ってここまで似るものかと、優羽は思った。