秘密の2人
響いた心
病気を発症してから今までの、苦悩やストレスを発散するかのように大泣きをした蒼空は、泣き止んだ後、今までで一番きらめいた笑顔を優羽に見せてくれた。
「実は、家族以外の人の前で泣くのは初めてなの。」
蒼空は少し恥ずかしそうにしたが、
「でも、なんかスッゴいすっきりした~!!」
と、元気に背伸びをした。
「今度は優羽ちゃんの番ね。」
「…えっ?」
突然話題が自分になって、優羽は驚いた。
「優羽ちゃんも、自分の人生を褒めてあげなくいとね?」
蒼空は優羽を見た。
〔俺の人生?〕
「優羽ちゃん、帰りに話したでしょ?正しいとは思わないけど、間違いでもなかったって。」
〔確かに。〕
優羽は帰りの会話を思い出した。
「これからは自分の為に努力するって言ったよね?」
「そうだな…。」
「だから、褒めてあげないと!!」
「……どこらへんを?」
優羽は自分の人生で、蒼空のように褒めるべきポイントをみつけることが出来ないし、褒めようとは思えなかった。
「親の為に頑張って努力してきたことに、新たな目標を見つけたことに。」
蒼空は立ち上がって背伸びをし、蒼空の前に立っている優羽の頭に手を伸ばした。
そして優羽の頭をなでなでし、ポンポンと優しく叩いた。
「優羽ちゃん、偉い偉い!」
優羽は硬直した。
「今日までは人の為に、明日からは自分の為に生きようね…」
蒼空は微笑んだ。
「限りある時間の中でやりたいことをやる。いつかではなく、いまやらないとね。
…未来は今を変えることは出来ないけど、今は未来を変えれるよ…」
蒼空はポンポンともう一度優羽の頭を優しく叩き、手を下ろした。
優羽は、蒼空の言葉が心に響き渡り、その振動で何かが音を立てて崩れた気がした。