秘密の2人
総合病院だがそんなに大きくない正面玄関から中に入り、すぐ左側にある初診窓口で受付をした。
窓口からさらに奥に進むと右側に診察室、左側に検査室が並んでいる。
蒼空は診察室3番の前の椅子で待つように言われ、母親と一緒に座って待った。
座ってしばらくするとドキドキしていた気持ちが少し落ち着いてきたのか、蒼空は周りを見渡した。
〔当たり前なんだけど…学生が全然いない。〕
今日は平日の午前で、学生は学校で勉学に励んでいる時間帯だ。
周りはお年寄りがほとんどである。
〔なんか場違いな感じ…〕
蒼空はなんとなく恥ずかしくなった。
初めから居心地が良くなかったのに、さらに居心地が悪くなった時、
「佐渡さん~。3番の診察室にお入りください。」
診察室から出てきた優しそうなスタッフに呼ばれた。
蒼空は落ち着いていたはずのドキドキが一気にパワーアップしたのを感じながら、母親と一緒に診察室へ入った。
中に入ると、30歳半ばか後半くらいの女医が待っていた。
長い髪を後ろで一つに束ねたシンプルなヘアスタイルだが、それが妙に似合う美人医師だ。
座っているからわからないが、おそらくスタイルも良さそうである。
「おはようございます。初めまして、担当させていただく宮野です。今日はどうされましたか?」
宮野医師が優しく話しかけてきた。
「えっと…っ」
蒼空が言葉を詰まらせると、母親が横からフォローした。
「最近、体調があまり良くないんです。今日も朝起きれなくて…」
「最近って、大体どれくらい前から?」
宮野医師は蒼空を見た。
「…1カ月位…かな?」
蒼空は過去を遡り答えた。
「どんな風に調子悪いかな?」
「えっと…身体が怠くて…なんか勉強に集中できないです。」
「あー勉強かぁ。それは困るねー。」
宮野医師は優しく微笑んだ。
「通学時間が長いから、早起きしないといけないのに起きれないし…」
蒼空は続けた。
「勉強も集中しないとついていけなくなるし…」
「そっか…。大変なのね。…どこ通ってるの?」
医師が聞いた。
「梅ヶ丘学園です。」
「あーっ!なるほど!」
医師は頷いた。
「確かに集中しないと大変なところだねー。私、梅ヶ丘学園出身なの。蒼空ちゃんは後輩なのねー。」
医師は懐かしむように話した。
「梅ヶ丘で頑張り過ぎなのが原因かもしれないけど、とにかく色々と検査をしてみて、今後どうするか考えましょうか?」
「はい、よろしくお願いします!」
答えたのは蒼空の母親だった。
蒼空は検査と言われてテンションが急落したが、ここまできたら言うことを聞くしかなかった。