秘密の2人

前進


優羽の『おサボリシャボン玉』場面に遭遇した日に、蒼空は底に沈んでいた気持ちを一気に浮上させた。



本来、蒼空は前向きな性格である。



最近、大人しくさせていた性格を久々に解放したので勢いがあった。



保健室に行き、体調が回復したことを告げて教室に戻った。



やはり特進組に優羽の姿は無かった。



〔あの部屋って何の部屋だろう…〕



超真面目生徒の不可解な行動に、蒼空は興味を持った。



〔こんな気持ち初めてかも!〕



勉強に感じていたワクワク感とは違う、新たな感情に蒼空はドキドキした。



その日は帰ってすぐに、夕食準備中の母親を捕まえて今後について話した。



「2年になっても梅ヶ丘学園に通いたい!」



母は体調の事がやはり心配なので反対しようかと思ったが、目を輝かせてハッキリと答えを出した娘を見ると…



〔反対なんて出来ないわねー…〕



蒼空の意志の強さは知っている。



「特進組のままではダメなのよ?それでもいいの?」


「うん!レベルは下げて、融通の利くF組に希望出そうと思ってるの。」


「F組!?」



母親は声が裏返りそうになった。



F組といえば通称『万年追試組』で、勉強に高いレベルを求めていた蒼空が自分から行くと言い出すとは思いもしなかったのだ。



だから母親の中では、特進組を諦めて組を少し下げて通うことは娘の中のプライドが許さないのではないかと予想していた。



「それなら他の高校に転校するっ」て言い出すのが一番濃厚だと思っていたのだが…。



まさかF組を希望するなんて…。



「いいかな?」



蒼空が母に聞いてきた。



〔私もまだまだね…〕



母は、目をキラキラ輝かせた愛娘に許可を出した。


< 85 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop