秘密の2人
注目
新しい年を迎えた1月。
学園はいつものようにスタートした。
しかし、特進組付近はいつもと違っていた。
他のクラスの生徒達が特進組を覗いてはひそひそと話ししながら通り過ぎている。
蒼空はその理由を知っていたが、何事も無いように本を読んでいた。
『カタン…』
隣の席の椅子が動いた。
蒼空はその音を聞いて本を持つ手に力が入った。
「おはよう」
蒼空は顔を動かさず、目線だけを声の方向に向けた。
その先には優羽がいた。
今の挨拶は自分に向けられたものだと気付き、
「おはよう」
と、蒼空は返事を返した。
蒼空は挨拶をしたら、目線をすぐに本に戻した。
二学期末、資材室で優羽の裏の顔を知った日の夜、蒼空は風邪をひいて、終業式まで回復せずそのまま冬休みに入っていた。
だから今日、裏の優羽を知って初めて顔を合わせるのだ。
ただ、それを知っているのは蒼空だけ。
優羽の何かを知ったととしてもどうもしないと決めていた。
〔ただ…行動の意味を知りたかっただけで…本性を知るとは思わなかったけどね…〕
生徒会室でサボりながら愚痴をこぼす優羽を、一体誰が信じるのだろうか…。
〔誰も信じないよ…〕
蒼空自身も自分の耳がおかしくなったのかと思った。
そして、優羽の周りに対する考え方を知ってしまった…
蒼空はあの時の優羽の言葉を思い出し、溜め息をついた。
「……髪…」
蒼空はハッとした。
そして顔を上げて優羽の顔を見た。
優羽と目が合い
「…驚いたけど…似合ってるね」
と蒼空に微笑みを見せた。
蒼空は目をまん丸にした。
そして顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。
〔耳が熱い…〕
慌てて顔をそらした。
「あ…ありがとう…」
真っ赤になった横顔を、赤茶色の髪が隠した。