溺れる月
月齢7 雫
暑いと、眠くなる。
昔からそうだった。
箱の中で、黄色いチェックのカーテンをじっと見ている。
額から流れた汗が目に入り何度も瞬きをする。
暑くて、お腹が減って、ぐらぐらする視界。
近くなったり、遠くなったりと不安定な天井。
こわい。
こわいよ。
そうだ、寝ちゃおう。
寝て、忘れちゃおう。
覚えていないはずの、昔の記憶が
あたしの脳の中で作り出されていく。
眠いと同時に怖くて、
差していたレースの日傘の柄を強く握り直すと、
あたしは腕に付いた傷跡を一本一本数えていく。
その一本のかさぶたをはがすと、じわりと血が滲んだ。
ああ、大丈夫だ。
あたし、まだ生きてる。
そう感じると、耳に町の音が帰ってきた。
あたしは、遠町 雫。
今、この間知り合った男の子を駅で待っているところ。
知り合った?
ううん。
違う。
無理やり知り合いにならせたのかもしれない。
だってずっと探してたんだもの。
予定よりちょっと早かった。
カルテを盗み見して名前を知って、これからだんだん仲良くなるはずだった。
だって、彼にはしてもらわなくちゃいけないことがあるんだもの。
無理やり引き込んでごめんね。
いままで、男の人っていやな匂いがして、怖くて大嫌いだったけれど、彼は違った。
甘い、いい香りがしたの。
あたしと同じ。
自分を傷付けないと生きられない男の子。
あなたをずっと探してたんだもの。
昔からそうだった。
箱の中で、黄色いチェックのカーテンをじっと見ている。
額から流れた汗が目に入り何度も瞬きをする。
暑くて、お腹が減って、ぐらぐらする視界。
近くなったり、遠くなったりと不安定な天井。
こわい。
こわいよ。
そうだ、寝ちゃおう。
寝て、忘れちゃおう。
覚えていないはずの、昔の記憶が
あたしの脳の中で作り出されていく。
眠いと同時に怖くて、
差していたレースの日傘の柄を強く握り直すと、
あたしは腕に付いた傷跡を一本一本数えていく。
その一本のかさぶたをはがすと、じわりと血が滲んだ。
ああ、大丈夫だ。
あたし、まだ生きてる。
そう感じると、耳に町の音が帰ってきた。
あたしは、遠町 雫。
今、この間知り合った男の子を駅で待っているところ。
知り合った?
ううん。
違う。
無理やり知り合いにならせたのかもしれない。
だってずっと探してたんだもの。
予定よりちょっと早かった。
カルテを盗み見して名前を知って、これからだんだん仲良くなるはずだった。
だって、彼にはしてもらわなくちゃいけないことがあるんだもの。
無理やり引き込んでごめんね。
いままで、男の人っていやな匂いがして、怖くて大嫌いだったけれど、彼は違った。
甘い、いい香りがしたの。
あたしと同じ。
自分を傷付けないと生きられない男の子。
あなたをずっと探してたんだもの。