ONE SIDE LOVE



無言の室内に突然携帯電話の着信音が鳴り響く。


「もしもし…。」


私に断りをいれてから将士が携帯電話をとる。


電話からは微かに相手の声が漏れているが、何と言っているかは聞き取れない。


「あー、うん―――うん―――――え……?」


電話をしている将士をぼんやりと見つめていると突然立ち上がり、目を見開くものだからこちらまで驚いてしまった。


――いったい電話の相手と何を話しているの…?


いつも冷静な将士がこんなにも動揺しているのを見るのは何度目だろうか。
数える程もないだろう。


ふとこちらへと視線を向けたかと思えば、眉間に皺を寄せ何とも言えない表情をした。


それからしばらくして電話を切った将士は口を開く。


「ゆう、今日おじさんとおばさんが帰って来ないって。」


うちの父と母は結婚をしてもう20年近く経つというのにまだまだ付き合いたてのようにデートを毎月している為、帰って来ない事も度々で珍しくもない。


「ふーん…。」


将士もその事を知っているはずなのだが、何故こうも動揺しているのだろうか。



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