ONE SIDE LOVE
――ドクッ ドクッ――
瞬きも忘れてじっと彼女を見つめていると、目の前まで来た彼女が口を開いた。
「あの…このタオルをくださったのはあなたですよね……?」
初めて聞く彼女の声はこの空の様に澄んでいて、心地よかった。
「私、あの日からずっとお礼を言いたくて、あなたのことを捜していました。」
俺の目を真っ直ぐに見つめる彼女の瞳にはあの日の様な涙はなかった。
そのことにほっとする。
でも、あの涙のことに触れてはいけないような気がしていた。
「タオル、ありがとうございました。」
そう言って、にっこりと笑う彼女に俺のこの気持ちが恋なのだと確信した。
――なにか、なにか彼女を引き止める方法は……?
気付けばそんな事を考えていた。
このままでは、もう二度と彼女と会う事が出来ないような気がして。
「あっ、ねぇ、これも何かの縁だし、これからどっか行かない?奢るし!」
まるで、下手なナンパの様な言葉だったが、それ以外に言葉がでてこなかった。