ONE SIDE LOVE
星也のクラスでは既にホームルームは終了したようだったが、何やら将士と話し込んでいるようでなかなか教室から出てこない。
「星也っ!!」
何も考えずに呼んでしまったが、間違いだったらしい。
二人は罰の悪い顔をしてこちらを振り返っていた。
けれどもそれはほんの一瞬で、二人は何事もなかったかのように私の方に向かって歩いてきた。
「ゆう久しぶり、隣のクラスなのにほとんど会わないね?」
将士は私の事をゆうと呼ぶ。
それは出会った小学4年生の頃から変わらない。
「うん…。久しぶりだね?」
本当はそんなことない。
私はいつも目で将士を追ってしまっている。
廊下ですれ違う時だって、教室の前を通る時だって、探してもいないのにすぐに将士を見つけてしまう。
「家に行く前にスーパー寄って良い?お茶無いんだよね。」
将士の両親は仕事の都合でなかなか家にいる事がなく、今はほとんど一人で過ごしているらしい。
何でもできる将士はもちろん家事も完璧にこなす。
小学生の頃までは家政婦さんが来ていたが、今では身の回りの事は全て自分でするためいない。
「じゃあ、ついでにアイスも。」
「星也、自分で払えよ?」
二人のそんな他愛ない会話を聞きながらスーパーまでの道を歩く。