ONE SIDE LOVE



星也のクラスでは既にホームルームは終了したようだったが、何やら将士と話し込んでいるようでなかなか教室から出てこない。


「星也っ!!」


何も考えずに呼んでしまったが、間違いだったらしい。
二人は罰の悪い顔をしてこちらを振り返っていた。


けれどもそれはほんの一瞬で、二人は何事もなかったかのように私の方に向かって歩いてきた。


「ゆう久しぶり、隣のクラスなのにほとんど会わないね?」


将士は私の事をゆうと呼ぶ。


それは出会った小学4年生の頃から変わらない。


「うん…。久しぶりだね?」


本当はそんなことない。
私はいつも目で将士を追ってしまっている。
廊下ですれ違う時だって、教室の前を通る時だって、探してもいないのにすぐに将士を見つけてしまう。


「家に行く前にスーパー寄って良い?お茶無いんだよね。」


将士の両親は仕事の都合でなかなか家にいる事がなく、今はほとんど一人で過ごしているらしい。


何でもできる将士はもちろん家事も完璧にこなす。
小学生の頃までは家政婦さんが来ていたが、今では身の回りの事は全て自分でするためいない。


「じゃあ、ついでにアイスも。」


「星也、自分で払えよ?」


二人のそんな他愛ない会話を聞きながらスーパーまでの道を歩く。



< 5 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop