恋のち、飴玉
気が付くと知らない土地にたどり着いていた。
電柱にある住所を見るも、聞いたことすらない地名が連なってますます困惑するばかり。
「迷子か?」
すると、突然背後から声が聞こえてきた。
「………」
振り返るとそこには男が一人。
白いポロシャツを着た、長身細身の男だった。
彼は私の姿を見るなり、
「……逃げてきたのか」
事情も知らないくせに、すべてわかりきったようにそう言った。
そのとき私はどうしてか、無性に彼に縋りたいと思ってしまった。
彼に対して、言い様のない安心感を覚えた。
もしかするとそれは、彼もまた、私のように《逃げ出した》人間だったからなのかもしれない。